2016年の観劇記録

こんにちわ。数年前から演劇にハマっておりまして、週末になると、ちょいちょい下北沢などの小劇場に顔を出して舞台を見ています。

しだいに観劇が楽しくなってきて、2016年は合計132作観劇しました(前年比約200%)。……もはや観劇のために仕事してる感じもしてます。断っておきますが、決してお金持ちでも、暇なワケでも(あ、暇は暇かも?)ありません。ハマってしまっただけ……おかげで、服とか、最近は買えていないかなー……さすがに貯金しないともうヤバいです。まあ、世の中にはもっと足繁く劇場に通っているかたもおられますので、威張るものでもないです。

それはさておき、2016年内に鑑賞した作品をリストにまとめました。

劇団 タイトル 劇場
1 リクウズルーム アマルガム手帖+ こまばアゴラ劇場
ナカゴー 暴れ馬/レモネード/コーキーと共に ムーブ町屋4Fハイビジョンルーム
シンクロ少女 ファニー・ピープル ザ・スズナリ
岡崎藝術座 イスラ! イスラ! イスラ! 早稲田小劇場どらま館
二兎社 書く女 世田谷パブリックシアター
ハイバイ 夫婦 シアターイースト
劇団ジェット花子 ロック・トゥ・ザ・フューチャー SpecialColors
マキーフン 胎内 SPACE梟門
2 東京No.1親子 あぶくしゃくりのブリガンテ 駅前劇場
池亀さん、他 リフラブレイン 花まる学習会王子小劇場
ロデオ★座★ヘヴン 鈍色の水槽 SPACE梟門
ねもしゅー企画 ねもしゅーのおとぎ話 ファンファーレサーカス 新宿Face
梅舟惟永企画 ありがとねえ! 早稲田小劇場どらま館
ゴジゲン 劇をしている OFF・OFFシアター
浮世企画 ザ・ドリンカー 駅前劇場
Mrs.fictions ミセスフィクションズのまんがまつり 花まる学習会王子小劇場
野鳩 解散公演『野鳩』 駅前劇場
熱帯 亜熱帯レーベル『サブトロピカル サステナビリティ』 小劇場B1
二月のできごと からす食堂/黒い三人のこども 104Rmond
3 シンクロ少女 this is 30 スタジオ空洞
劇団アトリエ 二番芝居 下北沢「劇」小劇場
VAICE★ いつかの膿 駅前劇場
鳥公園 ペルソナ(若手演出コンクール) 下北沢「劇」小劇場
映画美学校アクターズ・コース2015年度公演 友情 アトリエ春風舎
劇団☆新感線 いのうえ歌舞伎《黒》BLACK『乱鶯』 新橋演舞場
遊園地再生事業団+こまばアゴラ劇場 ワークインプログレス『子どもたちは未来のように笑う』 こまばアゴラ劇場
東葛スポーツ 金町◯屋書店 神保町SOBO
あひるなんちゃら ドロボー・シティ 駅前劇場
鳥公園 ペルソナ 森下スタジオ
4 ぱぷりか 虹の跡 シアター風姿花伝
パラドックス定数 深海大戦争 上野ストアハウス
ブルドッキングヘッドロック スケベの話〜オトナのおもちゃ編〜 ザ・スズナリ
劇団競泳水着 全 員 彼 女 小劇場B1
劇団競泳水着 全 員 彼 氏 小劇場B1
池亀さん、他 ハッピーアイススクリーム OFF・OFFシアター
20歳の国 保健体育B 駅前劇場
堀内夜あけの会 なりたい自分にな〜れ! 本多劇場
モダンスイマーズ 嗚呼いま、だから愛。 シアターイースト
日本のラジオ ゼロゼロゼロ スタジオ空洞
5 ナカゴー 特別講演『もはや、もはやさん』 ムーブ町屋4Fハイビジョンルーム
うさぎストライプ わかば アトリエ春風舎
Wけんじ企画 ザ・レジスタンス、抵抗 こまばアゴラ劇場
クロムモリブデン 翼とクチバシもください 赤坂RED/THEATER
下鴨車窓 渇いた蜃気楼 こまばアゴラ劇場
シンクロ少女 許されざる者(ハッピーエンドver) OFF・OFFシアター
池亀さん、他 (戦場に)行けたら、行くね。 東中野RAFT
DULL-COLORED POP 演劇 花まる学習会王子小劇場
DULL-COLORED POP DULL-COLORED POP名作短編集 花まる学習会王子小劇場
小松台東 勇気出してよ 三鷹市芸術文化センター 星のホール
なかないで、毒きのこちゃん やさしいムスコ OFF・OFFシアター
劇団ジェット花子 さようなら、劇団ジェット花子 阿佐ヶ谷アートスペースプロット
ロロ あなたがいなかった頃の物語と、いなくなってからの物語 シアターイースト
艶モニN°5 新宿シアターミラクル
6 オフィスコットーネプロデュース 埒もなく汚れなく シアター711
尺には尺を 彩の国さいたま芸術劇場
シベリア少女鉄道 君がくれたラブストーリー 赤坂RED/THEATER
かわいいコンビニ店員 飯田さん どりょく 北池袋新生館シアター
夢電球工房 恨陰(コンイン)ランドリー 新宿村LIVE
エマニュエルの作戦会議 あの娘のランジェリー Ito・M・Studio
20歳の国 いつかエンドロールで SPACE 雑遊
7 浅野と関川 アイドルスター☆トール! スタジオ空洞
reset-N knob 渋谷 spaceEDGE
□字ック 荒川、神キラーチューン シアターイースト
MCR 逆光、影見えず 三鷹市芸術文化センター 星のホール
青年団 ニッポン・サポート・センター 吉祥寺シアター
猫のホテル 苦労人 すみだパークスタジオ倉
ナカゴー いわば堀船 ムーブ町屋4Fハイビジョンルーム
母と惑星について、および自転する女たちの記録 PARCO劇場
劇団かもめんたる ゴーヤの門 シアターモリエール
笑の内閣 ただしヤクザを除く こまばアゴラ劇場
ヒトラー、最後の20000年〜ほとんど、何もない〜 本多劇場
味わい堂々 枯山水 スタジオ空洞
悪い芝居 メロメロたち 赤坂RED/THEATER
艶∞ポリス だせぇ 駅前劇場
8 Mrs.fictions 15minuites made Volume14 花まる学習会王子小劇場
別れの始まり フローズン・ビーチ スタジオ空洞
江古田のガールズ ご不幸(黒) 下北沢「劇」小劇場
虚構の劇団 天使は瞳を閉じて 座・高円寺
中野坂上デーモンズの憂鬱 溺死っ♡ ゴールデン街劇場
スタジオ空洞 ダージリン急行 スタジオ空洞
ONLY YUCK あくびび 新宿眼科画廊
下鴨車窓 旅行者 座・高円寺
イヌの日 ザ・スズナリ
江古田のガールズ ご不幸(白) 下北沢「劇」小劇場
3.14ch 大型 すみだパークスタジオ倉
ジェット花子 ビジーショット 中野新橋駅PRIME THEATER
MCR 無情 ザ・スズナリ
9 monophonic orchestra この町に手紙は来ない 3331Arts Chiyoda B104
はえぎわ 其処馬鹿と泣く イマジンスタジオ
箱庭円舞曲 あなただけ元気 ザ・スズナリ
遊園地再生事業団+こまばアゴラ劇場 子どもたちは未来のように笑う こまばアゴラ劇場
小松台東 明るい家族、楽しいプロレス!―今日も息子がウィ〜と叫ぶ― 駅前劇場
鳥公園 ↗ヤジルシ BUCKLE KOBO
あひるなんちゃら 毒と音楽 ザ・スズナリ
ヨーロッパ企画 来てけつかるべき新世界 本多劇場
かきあげ団 シン・乳吞児 スタジオ空洞
10 月刊根本宗子 愛と希望の先 本多劇場
SOLID STARプロデュース 主人がオオアリクイに殺されて1年が過ぎました。 俳優座劇場
犬飼勝哉 サークル ターナーギャラリー
うさぎストライプ みんなしねばいいのに アトリエ春風舎
プロペラ犬 珍渦虫 ザ・スズナリ
ジョンソン&ジャクソン 夜にて シブゲキ
good morining N°5 ケツラク 駅前劇場
11 ブルドッキングヘッドロック バカシティ たそがれ編 こまばアゴラ劇場
KAKUTA 愚図 あうるすぽっと
てがみ座 燦々 座・高円寺
ブルドッキングヘッドロック バカシティ あかつき編 こまばアゴラ劇場
日本のラジオ ヒゲンジツノオウコク 新宿眼科画廊
東葛スポーツ 短編集 3331Arts Chiyoda B104
劇団子供鉅人ピンク・リバティ ふでをならう 新宿眼科画廊
僕たちが好きだった川村紗也 ゆっくり回る菊池 こまばアゴラ劇場
劇団ジェット花子 ヒーロー・ネバー・ダイ SpecialColors
dracom ソコナイ図 森下スタジオ
12 Mrs.fictions 15 Minutes Made Volume15 花まる学習会王子小劇場
城山羊の会 自己紹介読本 小劇場B1
かわいいコンビニ店員飯田さん 位置について シアターノルン
劇団きのこ牛乳 ロリータ 新宿眼科画廊
月影番外地 どどめ雪 ザ・スズナリ
MCR ミカエル 駅前劇場
イマジネイション 【イマジン】二人芝居『夢見るふたり』 「劇」小劇場
イマジネイション 【イマジン】ストリートプレイ『トナカイを数えたら眠れない』 「劇」小劇場
贅沢貧乏 テンテン アトリエ春風舎
中野坂上デーモンズの憂鬱 意味の誕生。 荻窪小劇場
西尾佳織 2020 トーキョーワンダーサイト本郷
ナカゴー 特別劇場『パイナップルの食べすぎ』 上野小劇場
時間堂 ローザ 十色庵
カミグセ SとNの間の香り 渋谷 spaceEDGE
直人と倉持の会 磁場 本多劇場
幽霊でもよかけん、会いたかとよ 駅前劇場
風琴工房 4センチメートル ザ・スズナリ
渡辺源四郎商店 コーラないんですけど こまばアゴラ劇場
ろりえ 全裸物語改め実家物語 シアター風姿花伝

マイルールとして平日はなるべく見ないようにしています。観劇後に眠れなくなり、次の日に響くので、あっても金曜日、ほとんどは土・日に観劇しています。都心からすこし離れたところに住んでいるので、昼公演見たら、時間をつぶし夜公演を見てから帰ります(交通費がモッタイナイ)。いちおうおなじ演目のリピーターはしないことにしています(するとキリが無くなってしまうから)。

それなりにの作品数になりましたが、都合により泣く泣く見逃してしまった作品も結構あります。ざっと挙げると、

  • 『忍者、女子高生(仮)』月刊「根本宗子」
  • 『許されざる者(バッドエンド ver)』シンクロ少女
  • 『とうちゃんとしょうちゃんの猫文学』大部のできごと
  • 『ムーア』日本のラジオ
  • 『あなたが彼女にしてあげられることは何もない』チェルフィッチュ

などです。

いわゆる素人です

劇場のサイズにもよりますが、狭いところだと、客席が30人くらいでいっぱいになってしまうような場所もあります。そして、そのほとんどが演劇関係者らしき人たちで埋まっている公演があります。私は演劇関係者でも、経験者でも、その近辺に関連するようなことはなにもしていない身分なので、とってもアウェイな気分……会場に入ってから、妙にアットホーム感が漂ってたりして、焦ることもあります。気に入った作品を人に勧めたりもすることもあるのですが、こういった小劇場の雰囲気の中に入っていくのは、観劇の経験が少ない人には抵抗あるだろうなと思ってしまいます。演劇って、はじめての人には入りにくいかもしれません。映画に比べたら料金も高いですし(個人的には高いと思っていないけれど)。

それと、美術館に行ったときとかでも思うことなのですが、やたらフォーマルなドレスや着物を着ちゃったりして来場している人を見かけます。それが善い悪いの話ではなく、着飾りたい気持ちもわかるんですけど、鑑賞することを、そんなに特別なことにしなくてもいいと思うんですよね。もっと気軽で、日常的で。

演劇もおなじように思っています。まあ、国立劇場とかと小劇場とではちょっと雰囲気ちがうと思いますが……ともかく、作品を見ることが特別なことじゃなくて、もっと身近なこととして楽しめばいいのに、と思います。

そこに居合わせなければ体験できないこと体験できる喜び。おもしろい舞台を見終わったあとは、「この場に立ちあえて良かった」と思います。しかし、それが世界中のほんの数十人、数百人のあいだでしかおこなわれていないことが、とてもモッタイナイと思うのです。まあ、自分が世の中のたった数百人しかいない観劇者の中の1人だと思うと、得も言われぬ優越感が芽生えたりもするのです(器の小さい考え)が。

テレビやネットによる映像作品があたりまえのように広まっている世の中で、舞台は本当にはかないもので、地味なものかもしれません。だけど、舞台でしか表現できないものってたくさんあって、少なからずカルチャーショックを受けるはずです。案外とテレビの中の世界って狭いような気がしています。そうでなくても、単純におもしろい作品があふれていますので、もっと、たくさん人が入って、もっと演劇が活性化していけばのにな、と思っています。

駄作は……ない

綺麗事っぽいんですけど、「見て損した……」と思う作品はありませんでした。というより、劇場でひどいものって、そんなにないと思います。必ずなにかしらの発見があって、そのときはどうであっても、あとで、ふと思いだしたりしすることもあるし、それに、その次の公演を見たとき「こういう部分を描くのが得意な劇団なんだな」なんて発見に繫がったりします。他の作品で見た俳優さんが、違う一面を見せてくれていたり……とか、楽しめることはいくらでもありますしね。

私の、劇団に対するリスペクトが大きいこともあるかもしれません。だって、舞台の上の俳優さんたちって輝いてる。(素人なりの想像できる範囲でしかないけれど)作品をひとつの形にするのって、大変だと思うんですよ。あたりまえのことなのかもしれないけれど、膨大な台詞を覚え、かつ、それを独自に表現する。もちろん、出演者が複数人居れば、年齢も違うし、思想も違う人たちと呼吸をあわせなければならないし。なにより、オトナが俳優として生きていくって、社会的にも、金銭的にもかなりの苦労が想像できます。

演出だって、輝いてる。私は、よく物販で売っている上演台本を買って読むのですが、文字で読んでもいまいちピンとこないことがあって、言葉の解釈が固定化されたものではないことを痛感します。一度見た舞台の戯曲なら、上演時の光景を思い出しながら読めるのですが、見たことない戯曲は頭の中で思い描くしかない。だけど、それは、読む人それぞれの頭に違う光景が浮かんでいる。自分自身だって、今と、なに年後かに読み返したときでは、きっと考えることが変わるはずです。言葉は、つねに不安定に漂った状態でそこにいる。その揺らいでいる言葉を解釈して、舞台上に形にする……チェーホフのように、たくさん上演されている戯曲だって、この時どういう言い回しにするかで、言葉なんて意味合いが変わってしまう。演出によって、それぞれ何千何万というバリエーションになるのだと思います。演出の過程を思うと、果てしない仕事だなと感心してしまいます。

年齢のせいともいえないポンコツさ

私は大晦日が憂鬱です。年が明けた0時くらいが最も憂鬱の頂です。歳をとる……時間がどんどん過ぎといくのが怖くてなりません。

……そんなことはともかく、歳をとれば、当然いたる場所が衰えてきて、もともとミスが多いのに、輪をかけてポンコツになってきます。

ということで2016年演劇でやらかしたもろもろの失敗。

  • 間違えて大阪公演のチケットを買ってしまった(でも無事譲渡できた)…1回
  • チケットをとったのに行き忘れた…1回
  • 開演時間を間違え、入れなくなった…1回
  • 遅刻して入場…2回
  • 予約した1週間前に劇場に行ってしまった(しかしその時公演していた作品を見たからオーライ)…1回
  • 体調不良のため、内容うろおほえ…1回

去年よりは改善されてるかも……? それでも、迷惑かけてしまうようなことは避けないと……と思う次第です。

インターネットサマサマで、カレンダーアプリと地図アプリをちゃんと使うことにしました。格段にスケジュール管理はラクになりましたし、迷子は少なくなりました。スマートフォンに頼りきりなのが、堕落している感がありますが。

あと失敗というか、観劇中におなかが鳴るのが結構恥ずかしい。

2016年の個人的ランキング

2016年に見た中で、ひときわ記憶に残っている作品の感想を書き留めておきます。

前述どおり素人も素人なので、批評するなどとはおこがましいにもほどがあります。それぞれのカテゴリーを立て、そこで1番印象に深く残ってるものを、とりとめなく書いていこうと思います。見当ハズレのことを言っていたとしてもご寛恕ください。

書いている順番は観劇した日付順です。

黒木華、めっちゃかわいかったNo.1『書く女』二兎社

樋口一葉を題材にした話で、初演は寺島しのぶなんですね。そのときはどういう印象になったのだろうか、も気になる。かわいらしさ、力強さ……女優さんの力量を試されるような作品でした。これをやるからには、期待されているんだろうな、と。そして、十分魅力的に演じておられました。世田谷パブリックシアターの1階席中腹で、まあまあ良い席でしたが、もっと間近で見たかった。「オッサン気持ち悪いこと言ってんな」ええ結構。黒木華、かわいい。

フレッシュさNo.1『ロック・トゥ・ザ・フューチャー』劇団ジェット花子

ジェット花子は、笑いを先行させた劇団で、歌やダンスなんかも入れているし、体を張った場面もあって、私みたいなオッサンからすると「痛くないのかな」とか、思ってしまう激しいものもあります。多分、私が見たことある中で一番キャリアの浅い劇団だと思います。最初の公演を見て「若いなあ……」と思っていました。まだ拙いとも思えるのですが、技術を超えるフレッシュさがあふれていて、エネルギーは今まで見た劇団の中で一番際立っていました。

2回目のこの作品(まだ本公演でもなかった)を見た感想は、「こんなに器用な劇団だったのか」。最初の作品では、怪奇派に見えた俳優さんが話を回していたり、気づかなかった劇団員の個性がそれぞれ見え隠れしていた。ジェット花子の中でも好きな作品です。ちなみに、このあとに本公演を打つのですが、直後に何人か脱退してしまったようで、ちょっと寂しいです。番外編も2本上演。公演のたびにストーリーも深みが出てきてますし、個性も出てきている。客は減ってる? できれば、このまま、それぞれの個性を伸ばしていって、さらに成長していく過程を見たいなと思います。ほかの劇団での客演しても、また違う一面が見えそうでおもしろそうだと思います。

しあわせ度No.1『ありがとねぇ!』梅舟惟永企画

一年間で、見ていて一番幸せな気分になった作品です。

2015年に、「表現さわやか」という劇団が、短編で構成した公演をやっていまして、そのとき客演していた女優さんの自主企画です。「表現さわやか」の終演後に、主宰の池田氏が「好きな俳優さんにオファーをかけた」と話していたとおり、実力・魅力にあふれたかたたち(ほかには、鈴木砂羽さん、かもめんたる、「味わい堂々」の浅野千鶴さんが出ていた)が集まっていて、たしかにこのメンバーが気になって見に行った舞台でもあります。梅舟さんは、そのときにはじめて拝見したのですが、一番印象に残っていた女優さんでした。

『ありがとねぇ!』は、4本のオムニバス作品。脚本提供に、「表現さわやか」の池田氏、「ブルドッキングヘッドロック」の喜安氏、梅舟さんの所属劇団「ろりえ」の奥山氏、そして、かもめんたるの、う大氏……これは、「表現さわやか」の公演の縁が繫がっている嬉しさと、このメンバーが脚本を提供するなんて、女優さんとしても信頼があってのことなのだろう、期待が高鳴りました。

4編ともおもしろい話でしたし、なにより梅舟さんが本当に楽しそうに演じているのが伝わってきて、しあわせな気持ちでいっぱいになりました。自主公演ということもあってのことでしょう、やりたいことをぶつけてきている。

お気に入りは「ブルドッキングヘッドロック」の喜安さんの脚本。冒頭から驚かされる展開に、グッと心をわしづかみにされました。川村紗也さんという(2016年中に何度も舞台で見ているのですが、ここではじめて見たのかも)これまた輝いている女優さんとの二人芝居で、神がかっておもしろかった。こういう輝いているかたに、ずっと俳優を続けてほしいなと思います(オジサン観に行っちゃう)。

まんがNo.1『ミセスフィクションズのまんがまつり』Mrs.fictions

漫画を原作にした短編をオムニバス構成に舞台。ひさしく漫画を読んでいないので、作品はどれも知らないものでしたが、こういうアプローチもおもしろいなと思います。なにより、若い女優さんが制服着たりして、たくさん出てきたので、それだけもうきうき(オッサン気持ち悪い)。

近年のテレビドラマの原作が漫画のものもあたりまえになりました。私が子どものころは漫画読んでると馬鹿になるとか言われてずいぶん蔑まれましたが、いまは日本の文化とかナントカといわれるになって結構なことです。ライトノベルなんてジャンルもできましたし、文章を書く人も、漫画から影響を受けることが多々あるかと思います。

以前たまたま見たテレビドラマがひどくコミック的で、現実味無くつくられていて、なんだかおもしろいと思えなかった。漫画的な物語、視覚効果を取り入れるのはいいと思うんですけど、あまりにもコミック的な表現に見えて、リアリティが薄くなってしまっているのではないかと感じました(それを目指しているのか、それがいいとも言えるのかもしれないのですがね)。

まんがまつりの作品は、思っていたより現実離れしたものはなかったですかね。設定が現実に近い作品を選んでいたというのもあります(『ナオミ女王様に仕えた日々』はアレかな)。しいてお気に入りを挙げるならば、平方イコルスン『橋』の作品。気になったので、短編集も買って読みました。漫画の世界は今も昔もこういう鬼才がゴロゴロいるから恐ろしい。

女優がたくさん出てきた舞台だったんですけど、Mrs.fictionsは女優さんをキレイに見せる作品をつくるのがうまいなと思っています。女性のかわいらしさを引き出しているというか。このあとに短編を2作見ているのですが、そちらも作品、女優さんが愛おしく見えてくる作品でした。

解散が残念No.1解散公演『野鳩』野鳩

名前はちらほら聞いていたのですが、私は今まで出会えていませんでした。はじめての作品が最終公演となりました。

大好きな劇団「ナカゴー」の主宰鎌田氏が、『「野鳩」を見て演劇をやろうと思った』という話があり、似ているのかな?と思っていました。たしかに、そのエッセンスをうけ継いでいると思いましたが、「野鳩」はまた強烈な個性を持っている、稀有な劇団だと思います。

いわゆるゾンビもの。話の内容は、わりかしベタかなと思ったのですが、それぞれが妙な言い回しをしたり、しつこいくらいのリフレインを入れたり。かなり下品な台詞もあったりするのですが、全体的に軽やかで、うーん……シュールという単純な言葉で表現してしまっていいのかどうか。

無意味とも思えるリフレインや天丼も、回数を重ねると、意味がどんどん変わっていく。最初は単純なギャグに思えていたけれど、回数を重ねると、話の流れからニュアンスが変化しているようにも取れ、クライマックスに近づくほどに、哀愁とか、苦しみが滲んできます。私の中に、これが最終公演だということがバイアスとしてあったのかもしれません。劇中で見た、じつはだれよりも純粋な心を持っていたゾンビのまなざしが、切なくて忘れられません。

こんな感想を書いていたら、主宰の水谷氏が新ユニットでコント公演をおこなう情報が出ました。楽しみ。

劇場以外No1『からす食堂/黒い三人のこども』二月のできごと

佐久間真由さんという女優さんが企画した舞台。たしか「財団江本純子」の公演ではじめて拝見しました。とてもキレイなかたで、そのときじーっと見入っちゃいました(オッサン気持ち悪い)。江本純子さんの手がける作品によく出演されていますね。この公演の脚本と演出も江本さんが手がけています。

この企画に出演者、ほとんど以前舞台で見たことがある人で、印象に残っているひとばかり。ステキな俳優さんが集まるということはおもしろくなるはず。そんなこんなですぐに予約。

いわゆる劇場ではなく、ガレージのような場所での公演。2作品のうち、『からす食堂』は喋りの応酬で、コントのようでもある作品。江本さんの過去の作品ということ。もう1作の『黒い三人のこども』は台詞量は少なく、空気感のある作品。観客席や、入り口の扉も生かして、会場全体が舞台になるつくりでした。葬儀の話で、役者の台詞はぽつぽつ喋るくらいで、葬儀でおこなわれている焼香の流れや、出棺の流れを静かに進める。客席は葬儀場の座席の位置に想定され、よく知らない参列者と挨拶を交わしたり、久しぶりに会ったひとと軽い会話をしたり……悲観的でもなく、親族の愛憎劇が巻きおこるわけでもなく、こんな風景ありそうだな、ってことが厳かにおこなわれていく。……このあらすじだと、なんてことなさすぎて、これって作品になるの?みたいに、あっさりとした内容だと思われてしまうかもしれないけれど、これが作品として成立させてしまう、役者、演出に脱帽。最後の出棺のシーンで、扉を開けて外に出たり(私の見た回は、前の道にくるまが走ったりしてた)、この場所、その時間で起こる偶然のノイズも含めたものになっていました。

作品が場によっても変容するものだと痛感しました。だから、再演があったとしても、劇場が変わるだけで違った作品になるはずですよね。じゃあ、気になった見に行かないと、そのときのものはそのときにしか見られない(こうやって演劇にハマっていく)んです。

ちなみにこのおふたりで、このあと「大部のできごと」という名で公演を打ちまして、とても見たかったのですが、……ちょっと小豆島まで行くのは難しかった。瀬戸内だいすきなんですよね。ひさしぶりに島旅行きたい。

歌No.1『ドロボー・シティ』あひるなんちゃら

「あひるなんちゃら」って、一度見たら忘れない劇団名。チラシで目にすることがあって、以前から気になっていたのですが、ちかぢか公演があるとのチラシを見つけ、早速チケット予約。チラシのビジュアルも良い(文字組みはちょっとだったけど)。持論なのですが、チラシ見て(それが自分の好きな画だとか、デザイン的にどうだとか関係なく)ピンときたら、それは感性になにか訴えてきてるもので、たいていそういう作品は、割合その通りおもしろかったりします。第六感というか、ジャケ買いの理論です。

開演前に謎のテーマソング。「ドロボー・シティ」ってフレーズを歌ってるので、つくってるのかな? そういえば物販でCD売ってたよな……ナンか変な歌詞だし……だけど、この曲の入りでなんかワクワクしてくる……

内容はゆるい会話劇。コンパクトなつくり。畳み掛けて天丼仕掛けてきたり、ボケる人、ツッコむ人、キャラクターのつくりがしっかりしていましたね。小劇場の規模が似合っている作品だなと(決してディスりではなく)。大きな劇場でやるようなものではないと思います。でも、小劇場のすみずみ共振させる、ちょうどいい、あたたかい笑い。これは、やみつきになりそうな感じがします。実際に、9月に次の作品も見に行きました。次作も行くつもりです。

ちなみにCDは買いました。お風呂場でよく歌ってます。

深海魚No.1『深海大戦争』パラドックス定数

パラドックス定数って、あまり露出してない感じがするのですが、絶対に見に見ておいたほうがいい劇団です。脚本の鋭さに触れるたび、スゲー頭いい人が書いてるんだろうなってすごみを肌で感じ、ゾクゾクします。役者さんも、ほかの客演であまり見かけないかな。技術の高い人が集まっているのですが……。同じ劇団の『東京裁判』なんて、非の打ち所がない舞台だと思いました。チラシもあまり見かけないかな。

『深海大戦争』は、2015年に前編を上演。NHKの深海特集が放映されて、ダイオウイカが一大ブームになった昨今、動物好きとしては、ダイオウイカとマッコウクジラが戦うとなれば、見るしかないでしょう。前編の終演時に、主宰自ら「最後まで書くことができなかった」という挨拶があって、「いずれ続きを上演する」と言っていました。キャストが一部かわっていたものの、再演ではなく、後編です。

海底のダイオウイカとマッコウクジラの戦いを描いているとはいえ、きわめて人間的。種の生存のために、思想の違う生き物がぶつかり合う。階級意識、憎悪、友好か戦争か、対話か暴力か。同種の中でも、立場により摩擦が生まれる。そして、愛憎……作品の中で人間の存在を描いてはいるけれど、争う海底の生物たちの姿は、戦争を繰り返してきた人間の歴史を思わずにはいられない。争いと謀略の先に、知恵を重ね、宗教すら生み出す。さらに進化を求めるイカの姿……進化も発展も良いことではあるとしても、その先に重大な過ちをはらんでいる。フランケンシュタインのようなテーマも感じます。風刺といってしまっては短絡的かと思うけれど、この作品から、進化のありかたとか、生き物の将来のことを考えた現在のありかたとか、考えされられることは多いのではないでしょうか。

スケべNo.1『スケべの話〜おとなのおもちゃ編〜』ブルドッキングヘッドロック

こんな賞にしてしまいましたが、この作品を見たことで、自分の中の考えかたというか、舞台の見方が少し変わったように思う、特別な作品でもあります。

さきに「ブルドッキングヘッドロック」って劇団の、私なりのイメージなのですが、演劇というものに真っ向から向き合っている団体ではないかと思います。舞台の表現を深く追求している。いわゆるリフレインや、回想、時間軸が環になっていたりする、舞台作品でよく見かける技法ともいえるのですが、それら使いかたに無駄が感じられない。理論的に熟知しているからこそ構成している。技法の一手段としてやっているのではなく、必然的なものとして使っている感じを受けるのです。そんなストイックな追求、きわめて舞台に真摯的な接しかたで、演劇に対して深い愛情を持っているのではないでしょうか。

で、スケべの話。ある出来事にAとBの結果が起こると予想できる。物語が進んで、多分その事件は起こったのだろう。だけど、その後に提示される流れには、決定的になにが起こったのかが明示されなくて、Aになったのか、Bになったのか、巧妙にわからない。どちらとしても辻褄が合わないことはないけど、だとすると、あの人がアレをしたのか? じゃあ、あの人とあの人はアレなのか? そしたら、今言った台詞はこういう意味なのか? でも、もし違ったのなら、また別の意味が生まれるし……。観客は目に見えている物語の進行のほかに、頭の中で幾重にも枝分かれした物語を推理しないとならない。その同時並行の観劇体験。脳内麻薬が湧き出てる感にうっとり。そうだよね。見えている舞台上で、すべて事実を明らかにする必要なんてないし、語らない台詞というものがあるんだ……という、気づきがありました。そして、こんなに想像を掻きたててくるなんて、なんというスケベさなのだろう……と。

私的No.1『演劇』DULL-COLORED POP

……なんで今までこの劇団を見ていなかったんでしょうか。激しく後悔。

本公演と、短編集の2作同時上演……で、これをもって活動休止。ここで演劇というタイトルをもってきた意気込みを感じるし、2度目の活動休止らしいので、今見ておかないと後悔するかもしれません。

結構長めに公演期間があって、私が見たのは前半のほうだったかな。もう千秋楽のように仕上がっている感じに見え、一挙手一投足見逃せない、緊張感のある俳優さんの演技。かなりストイックな劇団だなというのは感じていたけれど、ここまで、指の先まで緊張感のある演技は、役者さんの技量、演出の鋭さがあってのものだと思います。

演劇自体をテーマにしてしまうのは、過去にも何度か見たかな。物語の流れとは違うけれど、部分的に演劇について暗に描いているのではないかな?と感じるモノもたくさんあります。ちょっと構えてしまうタイトルでもあります。メタ的になりすぎたり、結論を出せないけど楽しいじゃん的、もしくは私たちはコレからもがんばっていくよ的な意思表示……で終わってしまう可能性もありうるかな、と。そうなってしまうと、あまり好きじゃないな……

内容は、いじめ問題が起きた学校内での話で、教師の視点、保護者の視点、子どもからの視点を絡ませながら描いていた(複雑な構造なので、詳細な説明が難しい)。「演劇」の意味は、ストーリーの中の要所要所に感じさせる仕組みなのではないでしょうか。メタ的になりすぎず、話の中に演劇的なものを暗示させる。たとえるなら、人生は舞台にかもしれないし、だれしも自分という存在を演じているのかもしれない……なんて書くと陳腐な感じですが、おおよそ演劇で取りあげられるモチーフ、死や、主観と客観、性……ストーリーの中で表現していたように思えます。演劇の楽しさと魅力を込めていた作品だったのではないでしょうか(うーん、うまく言葉にできない)。哲学的にも見えたし、フロイトのようなものも感じました。

回り舞台も使っていて、舞台装置の面でも、演劇でできることを存分に表現しようとしていたんじゃないかなと思います。

なんだかうまくまとめられないのですが、私的に、一年のナンバーワンの作品です。

時間感覚No.1『勇気出してよ』小松台東

どうでもいいことなんですが、私、時間感覚が結構いいと思っています。楽しいときは時間が立つのが早く感じるなんていいますが、そんなときでも、わりあい冷静に、どれくらいの時間が経過しているのか把握できるタチです。上演時間が事前にアナウンスされていると、あとどれくらいで幕が下りるのか、あとどれくらい急展開があるのか、逆算したり(まあ、ストーリーの流れがありますが)、観劇中に測れる感じです。……うーん、別に普通のことかな?

そんなこんななんですが、この作品は時間感覚が思いきりズレて、「アレ? もう終わっちゃた」と驚いた舞台でした。

小松台東は、主宰の地元が宮崎ということもあり、ほとんどの作品を宮崎弁でつくっているようです。この作品も含め、過去に私が見た作品もすべて宮崎弁、舞台も宮崎でした。すぐに宮崎弁が耳になじんでくるからふしぎ。ハートウォーミングとか、テイのいい表現をするのはどうかと思いますが、心のあたたまる作品が多く、家族ものの対話劇が多いかな。地方ならではの粗野な部分や、近隣関係が密な部分も描かれていますが、そういったのんびりしたものや、ノスタルジックなものだけでは決して出せないあたたかさがあります。

水商売から足を洗った女性の営む喫茶店には、気のおけない友人たちがいつも集まってきて、とりとめもなく時間をともにしている。そこに東京から地元に戻ってきた男が喫茶店に訪ねてくる。何気ない会話……過去の恋愛の思い出、悩みごとなどを話しながら、なんとなく輪の中に溶け込んでいく。

着実に話は進んでいくのだけど、ゆったりと進む会話が進んでいて、幕が下りたときに「あれ、終わっちゃった」と、びっくりしてしまいました。でも、考えてみればそこが話を終わらせるタイミングだなとも思うのですが、そのときは突然に思えました。舞台の世界に入り込んでしまったかのような感覚になっていて、この会話がずっと続いていくんじゃないかな、なんて気分になっていたんですね。それに、いつまででもこの人たちの会話を聞いていたいな、とか。終始やわらかに魅了させる作品に浸っていました。

小松台東、とっても好きな劇団です。主宰の松本氏自体も俳優として精力的に活動していますね。ちなみに、5月に「VAICE★」というユニットに『いつかの膿』という脚本を提供してる(出演もしていた)のですが、これは結構下世話なストーリーでした。

笑ったNo.1『傷』艶モニN°5

「艶∞ポリス」と「good morning N°5」という団体が融合。前半を「艶∞ポリス」、後半を「good morning N°5」が話を書いた作品。

「艶∞ポリス」ははじめて。「good morning N°5」は昨年体験、大いに笑わせてもらいました。脚本・演出の澤田女史は「拙者ムニエル」の人でもあり、この作品でも笑わせてくれるだろうと身構えていったつもり(のクセに、その前に「ロロ」をハシゴするという、食い合わせの悪さ)。

「艶∞ポリス」は女性のミエとか、嫉妬とか、「こういうヤツいるよね」みたいなものを描くのがうまい。「good morning N°5」もそういったところがうまいし、そして破壊的な笑いを生みだす。このあと10月に「good morning N°5」の『ケツラク』という公演も見るのですが、異次元に吸いこまれたような猛烈な笑いの世界に引き込まれるので、ポカーンとしてしまいました(説明難しい)。

前半の女性陣の心理戦と、後半の破壊的展開。想像の斜め行き度合いがハンパなかった。まさにふたつの団体の化学融合を起こした作品でした。地獄のように笑いました。もし、あの世に「延々と笑い続けなければならない笑い地獄」というものがあったら、ここに居る鬼は、艶モニN°5のような姿をしているのではないかと思います。(何を言っているんだ)。

北池袋ってどこだよNo.1『どりょく』かわいいコンビニ店員飯田さん

北池袋に劇場なんてあるのかよ……ってか、開演まで時間潰そうと思ったのに喫茶店もないよ……え、板橋から歩ける? 23区内なのに駅前が閑散としてるってなんだよ。都会をサボりやがって……

まあ、そんなことはさておき、この劇団名が気にならないのは無理というものです。はじめて聞く劇団ながら、出演者はわりと知っている人が出てたり、よく聞く劇団の俳優の名前も。ステキな俳優が出るということは、脚本も演出も評価できるから人が集まってくる……ということはおもしろいのかも……と導き出します。まあ、気になったのなら後悔する前に見てみろって気持ちがまず先に来るのですが。

短編集、過去作品と新作の2作品公演。私は新作のほうを観劇。見に行った日が千秋楽で、そうでなければ過去作品のほうも見たかった。コントのような笑いがたっぷり入った作品でした。

職場の女性同士の、恋人の浮気のいざこざ、社会に対する抑圧と抵抗(?)などなど、僻みやら、偏見やらを思い切りぶつけてくる。笑える作品ではあるものの、人間の観察がいちいち鋭くて、逃げ道をどんどん論破していったり、ひらきなおったり、巧みな展開が応酬していました。短編といえど3作もあれば、おなかいっぱい。満腹、満足でした。

2016年年にはじめて見る劇団はたくさんあったけれど、風格、完成度の高さで一番印象的。もっと大きな劇場でやってもおかしくないのにと思いました。

ちなみに、このあとに『位置について』という作品も観劇(この時の劇場は蒲田。遠いよ……わかりにくいよ)。保育の現場がテーマの重厚な作品でした。笑いの要素は抑え、ちょっと印象が違う感じがしました。「ぱぷりか」という劇団とイメージが似てるかな?と思っていたら、主宰が次の「ぱふりか」の公演に出演するそうです。シンクロニシティ。

完成度No.1『ニッポン・サポート・センター』青年団

ここまで平田オリザ初体験だという……ニワカっぷりを露呈してしまいます。

この作品の前に、「Wけんじ企画」のたくさん青年団の俳優さんが出ている舞台があったので、見覚えのある俳優さんで構成されていました。

たくさん取材してるんだろうな。演じてる役者さんの体温がとてもリアル。生活困窮者やDVなどの一時避難の相談をしているNPO法人のお話で、舞台上はそのオフィスの中。現実に活動している団体も、相談が持ち込まれたとき、こんな対応をしているんだろうなと。非営利だから予算の問題もあるだろうし、公共機関との連携も気遣わなければ運営できないだろうし、システムや、手続きも多くて、まどろっこしいことやってるなって印象も受けてしまうんですけど、実際もこういう組織って慎重にやっていると思うんですよね。舞台装置の雰囲気も、いかにもありそうな感じがしてリアルなんですよ。

相談を受ける以上、相談員は冷静に対処しなければならない訓練をしているだろうし、だけど、人間だから、感情はある。それが、抑えているようで、見え隠れしているようで、実際に職員の中にトラブルを抱えている人もいるし……その演技と、描きかたが秀逸でした。相談者の中には面倒くさい人も居るわけで、私からすると、大変な仕事だな、なんて思います。

決して派手な作品ではないですけど、完成度の高さに感服しました。

好きかもNo.1『渇いた蜃気楼』下鴨車窓

2016年にはじめて見た劇団の中で、一番「好きだな」と思ったの劇団です。2016年は、『旅行者』と2作見ましたが、京都を拠点しているらしいので、どうしても東京の公演は少なくなってしまうのかな? 行ける範囲だったら、今後もぜひ見に行きたい。

『渇いた蜃気楼』は5月に観劇したのですが、舞台上は真夏。うだるような暑さを感じさせる雰囲気つくり。舞台上に矩形が描かれていて、あれはきっかり六畳分の広さだったのかな。ここがアパートの一室で、空調もない、散らかっている部屋というのがすぐに感じ取れる。部屋以外はざっくり削ってある。舞台上の端のほうは暗くて、空虚のように見えるんだけど、こういう舞台の浮かび上がらせかたも、淡々とした作品にあっていて好印象でした。部屋に紙が散らかっていて、それはきっと物語の進行上意味はないのだけれど、部屋が雑然としていることを暗示させているのだと思い、わりあいすんなり見たのですが、気になっちゃう人は気になっちゃうのかな? 舞台に置かれている物たちも、象徴的な意味合いを持たせて置かれているようで、セットにも神経が配られているのを感じました。あとに見た『旅行者』のほうは、もっと象徴的だったかな。とくに説明はされないけれど、どうしてこういう家の形をしているのかとか、それだけで想像を掻きたてます。2作とも派手さはないけれど、じっくりと味わう作品でした。

実際には、東京公演を打つ劇団しかみたことがないので一概にどうとは言えないのですけど、関西の劇団は、どちらかというと対話や、ストーリーの展開はさることながら、空間の使いかた、間の取りかたが味わい深いものが多いのではないかなと思っています。台詞のない沈黙の演技、照明の使いかたとかも、じわりじわりと暗転させたり、上品な感じがします。私はこういった演出が好きなので、関西の劇団が肌に合っているんじゃないかなと思っています。

その点、東京の劇団は、話の中に笑いの要素を入れている多いかもしれないですね。それはそれで大好きなんですが、地域差によって作品に特徴が出てくるのかもしれません。旅行のときに現地の劇場にも行ってみたいな。

カルチャーショックNo.1『溺死っ♥』中野坂上デーモンズの憂鬱

劇場で配られるチラシを見て、「これはヤバそうだな」と敬遠する劇団がいくつかあります。「中野坂上デーモンズの憂鬱」もそのうちのひとつ(筆頭)だったのですが、このころに無性に気になりだして、見に行くことにしました。観劇作品数が増えてきて、違った刺激が欲しくなってきたのかもしれません。もうアングラ劇団でもドンとこい。

新宿ゴールデン街に小さい劇場があって、その名もズバリ「ゴールデン街劇場」。そこが近々閉館するようで、デーモンズとしてもこの劇場では最後の公演になるそう。

ゴールデン街劇場は、はるか昔に一度行ったことがありまして(見た劇団名も思い出せないくらい前のこと)懐かしい気持ちもあり、まあ、そんなこんなもあり、怖いもの見たさもありました。

開演前から、舞台上に無表情で踊る役者、脚本が書けなかったという言い訳のナレーションがループで流れている感じ……おお、期待していた通りか、という雰囲気。結果から言ってしまうと、たしかに下品さ、エロさグロさ、無意味さだらけの作品だと思いました。しかし、役者の演技は真に迫っていたし、息もあってるし、言葉のつかいかた、時間の構成、どれも、演劇の技術として水準が高い。表現しているテーマが、ちょっと教育上どうなのみたいなところがあるだけで(全裸になってたしね)、かなり見応えのある作品でした。勤勉に演劇の技法の追求、稽古をしてるのではないかと想像します。古典戯曲とか演じても、迫力あるのをやりそうに思えるんですよね。

この作品、脚本が書けなかったと言ってるわりに、これでもかというくらいの展開が盛り込まれていて、このテンションでいつまで続くんだろう?と、見ているほうが疲れを感じるほど(物販で過去公演『青い稲妻』のDVDを買ったのですが、それも、脚本が書けなかったっていう内容から始まっていた)。極めて真面目に、身体から滲み出てきたものを純粋に表現しようとしている。それがアングラなだけで。こういった、人に勧めることをためらってしまうような作品が見られるのは小劇場ならではだし、その、人に勧めることをためらってしまう極のようなものを、全力でつくり続けてほしいと思う。こういう書きかたをするとディスりのようにも捉えられてしまうので、断っておきたいのですが、絶賛してます。

ちなみに、このあとに『意味の誕生。』という作品も見ています。こっちのほうがストーリーとしては素直(?)かな。展開が複雑すぎて振り落とされちゃったところも多かったんですけど、今後の作品にも期待できるし、DVD買ってもう一度見たい。

ハプニングNo.1『シン・乳呑児』かきあげ団

舞台は、そのときそのときにしか見ることができない体験です。過去公演の映像を販売している作品もありますが、初日と千秋楽で演技は変わるはずですし、会場の雰囲気でもおもしろさも変化します。いうなれば、どの公演も、またとないオリジナルです。この作品は、そのときに居合わせた人しか体験できない作品という意味で、奇跡的な作品でした。

まず、この公演は、かきあげ団所属のふたり(団長と団員)と、他ユニットに所属しているかたが組んだ「マスク三兄弟」の、1回のみの公演のはずでした。上演1週間前に、諸事情によりひとりが降板。残ったかきあげ団のふたりで、かきあげ団の過去作品を再演することなりました。

当日は投げ銭システムに変更。前座(?)にシュールな人形劇(これもおもしろい内容だった)。で……なかなか本編に移らない。なんだかバタバタしてる。かきあげ団団長の説明によると、会場に団員の身内が観劇に来ていて、来ることを知らなかった団員が緊張のあまり体調を崩した、とのこと。

こんなことあるのか……というオドロキと、でも、こんなパプニングがなんだか似合っているな(当人たちからすると不名誉かもしれないですが)と思いました。かきあげ団のキャラクタ?なんでしょうか。そのあと、遅れたものの、無事開演。スタジオ空洞という小さめの場所で、小劇場ならではのあたたかい観客に囲まれて、素敵な観劇体験でした。

実を言うと、「かきあげ団」はキワモノの劇団だと(勝手に)思っていたのですが、ストーリーもしっかりしていたし、息があっている印象。再演だからかな、扱ってる時事ネタが絶妙にちょっと古いタイミングで、これも妙なおもしろさでした。

今一番愛おしい劇団です。ちなみに「かきあげ団」のツイッターをみると、島崎和歌子情報が満載。

チラシデザインNo.1『サークル』犬飼勝哉

ランキングのタイトルをこんなのにしましたが、作品自体かなり気に入っています。

犬飼氏のやっていた劇団「わっしょいハウス」の時に1作品見たことがありますが、今回からは個人名義になったようです。

街にあるショッピングモールのことを描いているのですが、舞台に登場するのは、結婚してはいないが、それなりに深い関係のようすふたりの男女。ソファと、簡単な小物が置かれていて、同棲している部屋なのでしょう。それぞれ、ふたりのエピソードや、街のことをぽつぽつと喋りだす。インタビューを受けているかのようでもあって、ゆっくり、ときどき相づちを打ったりしながら、話し続ける。言葉で輪郭を描いていく街やショッピングモールは、頭の中で思い浮かべるしかない。

舞台も見ているのと、頭の中で景色を見ているのと、二重に見ていることになる。さらにふたりの台詞から時間軸を構成しなおして話を追っていく。視覚で見るのと同時に、脳内で見る作業を強いられる。途中、目の前のふたりを見失って、脳の中の見ることだけに行ってしまったして、かなりのカロリーを消費する作品だなと思ったのだけど、これは頭が回転して気持ちよくなってくるヤツです。

台詞で空想している景色の描写は、観客それぞれ違んはずですよね。思い浮かべているのは、自分の家に近いショッピングモールだったり、行ったことのあるモールだったりするんじゃないでしょうか。きっと、それは観客おのおの違う。役者が喋る街の景色も、観客それぞれ見たことのある風景や、写真で見た景色なんかを、頭の中で思い描いているのでしょう。ということは、目の前の役者の演技はおなじものでも、頭の中で、観客それぞれ、別々の舞台を見ていることになる……と気づいて、演劇の表現の可能性の広さに、はっとする思いがしました。

観劇の感覚が、ほかのどの作品とも違うユニークな作品でした。

タイトルNo.1『みんなしねばいいのに』うさぎストライプ

この作品の前の公演『わかば』を見たときに次回公演の告知が入っていまして、こんなタイトルつけられたら見に行くしかないだろうなと、すぐに観劇確定。

『わかば』のときに、「大人になれない大人のためのうぎストライプ」なんていうキャッチが入っていて、今回もそんなテイストを感じました。これが「うさぎストライプ」のテイストなのかなと思います。

いきなり三角布を付けたあからさまな霊が出てきたり、ぬいぐるみが出てきたり。ファンタジックでもあるんだけど、人間の心の汚いところにメスを入れる。内面だけでなく、暴力も描いている。カワイイと残虐さが融和しているところが現代的感性というか……『わかば』のときに、相対性理論の曲が流れていたんですけど、その世界観ともマッチして気がしています。とても、今の風潮にあっている感覚の劇団だと思うんです。

『みんなしねばいいのに』は、もっと鬱々したものかと想像していたのですが、そうでもなかった。べつにスプラッタを期待していたとか、そういうことは無いですけど。

余談ですが、アトリエ春風舎って、幅も狭くて、どうしても窮屈な感じを受けます。音の響きも窮屈かな。歌っていたので、少し広めの舞台で見たらどう印象が変わるかななんて思うですよね。

胃が痛かったNo.1『ソコナイ図』dracom

いや、体調が悪かっただけの気もするのですが、見ている途中から緊張感がすごくて、胃がキリキリしていた作品です。(紹介文は読んでいたものの)チラシのイラストがかわいかったんですよ……

舞台上にふたりの姉妹が横になっているところから始まる。年末から年始にかわる境目の時間に、新年を祝うことも、旧年を振り替えることもなく、暗い中に横たわっている姉妹がぽつぽつ話し出す。おなじマンションの人、役所の人、それぞれ出てくる登場人物たちは、この姉妹やあるいはほかの人について語るけれど、あくまで自分の意見を自分の立場で断片的に話している。台詞は繰り返しが多く、徐々に繋ぎ合わせて物語が進んでいくので、重い時間をさらに鈍く進めていく感じがしました。貧困がテーマになっていて、中盤で姉のほうはすでに死んでいることがわかる。その隣に横たわっている妹も、生きているのか、死んでしまったのか、ぽつぽつ喋る内容から、探りながら見ていく……終盤に差しかかって、だんだん怖くなってきたんです。台詞の繰り返しが、暗い舞台の重さをどんどん増してきて「もう早く終わりにして」という気持ち。だけど、終わるということは、妹が死んでしまうことなんじゃないのだろうかと思うと、「終わってくれるな」という気持ちが併行して生まれてきました。結果、胃が痛くなる自体に。

戯曲を読んだだけだと、意味合いはわかると思うけれど、実際の舞台上の雰囲気は伝わらないかもしれないし、割合さらっと読めてしまう文章量だと思う。時間と空間を感じさせる舞台で、まさに文字で読んだだけでは伝わらない作品をつくっているなと思います。

主に大阪で活動されている劇団のようで、役者さんも、知らないかたたちでした。この作品だと、むしろ知らなかったほうが適切な距離感になったかも、という気持ちもあります。ほかの作品も見てみたいです。先にちょっと書いたとおり、西の劇団の作品はけっこう肌に合うかもしれないですね。

はぁー? No.1『自己紹介読本』城山羊の会

岸田國士戯曲賞を受賞した『トロワグロ』を見たときに、撃ち抜かれた城山羊の会の最新作。

城山羊の会の話って、結構きわどくもあり、その場の雰囲気によっては笑えないんじゃないのかな、と思うことがあります。ちょっと性表現がキツいときもあるし、結構残虐な場面もある。これ、笑っていいの?と戸惑うことも多々あります。実際、『トロワグロ』の次の作品『仲直りをするために果物を』という作品を見たとき、ちょっと笑えなくて、アレ?って思いました。

『自己紹介読本』は『トロワグロ』とおなじくらい大笑いしました。物語は……『トロワグロ』もっと下世話だったかも(いい意味で)。

絶妙なタイミングで、登場人物がイヤなことを言いだしたり、空気を壊すような発言を挿し込んでくる。とはいえ、言葉のロジックがしっかりしていて、前に言った台詞を引き合いに出したり、揚げ足とったりもしながら、執拗に追い込む。そして突然泣き出したり……こういうのを描くのがとってもうまい。

自己紹介は初対面のときにすること。初対面の人との出会いが、なぜかずるずると深みにはまっていく。中には恋人や友だちの間柄もあるのだけど、腹の中では何も繋がっていないようにも思え、みんな初対面で簡単なプロフィールを紹介しあっただけの、薄い関係のようにも思えてくる。“絆”という表現がよく使われるようになったけれど、親密さって本当はなんだろう? 結局、自分以外は他人なんだろうな、なんて、気分になりました……が、まあ、素直に笑いながら鑑賞していいと思います。

ちなみに、『トロワグロ』を映画化した『At the terrace テラスにて』が、公開になっていますので、ぜひぜひ。

まとめ

書きだしてみると、もっと取り上げておきたい作品もたくさんあったのですが、キリがなくなりますし、自分の文章力の乏しさも感じたので、これくらいにします。

以前はフェイスブックに感想を書いていて、その後、体裁を整えよう、なんならまとまったところで小冊子にでもしようかなと思いつつ、すぐに追いつかなくなり頓挫しています。文章を書いていて、思い出せない部分も多々出てきたし、もう一回見直したいなと思う作品がたくさんありました。観劇、楽しくてキリがないですね。

なんだかんだで2016年はたくさん観劇できたのでしあわせな1年でした。2017は貯金しないと、かな……

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