書影:FUTURISMO

FUTURISMO

いかるがつみき/作 知古つとむ/造本

B6判 336頁

ソフトカバー

FUTURISMOフトゥリズモ

流行は一定の周期で巡る。
風潮も、思想も、流れては戻り、巡っている。
未来は過去になり、また過去は未来になる。
今こそ、思いだすんだ。
未来を……未来派を宣言したあの日を。
いかるがつみきのブログ『たらればの世界』で発表した作品と、
書き下ろしを多数含む自選短編集第2弾。
ブログで発表した作品も、大々的に加筆・修正。全32編の大容量。

いかるが

タイトルは、20世紀初頭に興った芸術活動「未来派」をもとにしています。そのころ未来派について、いろいろ本を読んでいました。
なぜこのタイトルにしたのかは、収録中の最後の作品の中で書きましたが、かいつまんで云ってしまうと、とある女性誌のメイクの特集に、まるで無機質な人形のようなることを賞賛するかのようなキャッチコピーを見たのがきっかけです。「お人形さんのような」という褒めことばがありますが、そのキャッチコピーからは、もはや形容ではなく、人形をそのものを目指しているのではないかと思ったのです。もうすでに、理想は人間という生物を飛び超えている。 人間以上、人間では再現できない美。表面に凹凸のない、精巧でフラットなものになることが現代の理想になっているのではないか。それは携帯写真アプリで自分の姿を加工することがあたりまえになっているところからも窺えるのではないでしょうか。
これは、あたかも機械化を賞賛し非人間的なもの讃えた未来派の思想に通じるものがあるのではないかと感じたのです。未来派は過去の思想になって久しいものの、また思潮が巡り巡って未来派が還ってきているのでは……? かなりの暴論ではありますが。
短編集なので、すべて未来派のことを意識した作品ではありません。収録作品は前回の短編集とおなじように、ブログで書いた作品の加筆・修正と書き下ろし掌編で構成しています。50ページを超える作品も収録しています。

知古

未来派については、さほど印象を持っていなかったものの、動きや速度を絵画で表現したりする試みは興味深いものがありますし、彫刻作品などもおもしろい。中学生のときによく眺めていた美術の教科書のなかに、バッラの絵画があったことをいまでも覚えています。このタイトルが決まったときに、あらためて資料や絵画作品を見直してみました(箱根彫刻森とかも行ってみた)。
ちなみに装画は、ジャコモ・バッラの『Girl Running on a Balcony』という作品をイメージしています。少女が走っている絵のオマージュというか、なんというかです。犬の絵とアマツバメの絵も潜ませています。
短編のタイトルごとにイラストのようなグラフィックを入れています。たのしい試みでした。
文章は、いかるが作品の代表作といえる力作が集まっています。