陽光ようこう
日常にひそむ感情の邂逅。抑圧された欲望を綴る3編の独白。
女性に対する欲望を語る『陽光』、退屈な日々を生きる大学生『果實の系統』、小説家を気取っていた学生時代を回想する『かさゝぎ』。いかるがつみきの書き下ろし短編集。
いかるが
作品の善し悪しなど考えず、思うがママに書いてみようかなという心境のころに書いた3作の短編集です。これまで書いていたものより、構成など考えずに、感覚的に書いてみた作品たちです。
こんなことを云うのもどうかと思いますが、実験的なことをしたかった時期なのだと思います。
制作側はもっと実験的なことをやってくれました。
知古
明治くらいの本の中で、和紙に活版印刷で刷られた本を見たことがあります。キレイに印刷されていて、和紙に活版印刷は相性がいいのかもしれないなと思い、そんなテイストを出したいなというのがこの造本の発端でした。最初は亜鉛版で凸版印刷することも考えたのですが、コスト面から考えると、とても高価で……結果、和紙にインクジェットプリンタで刷ることになりました。しかし、和紙とインクジェットも、結構綺麗に印刷できたりします。
この作品、特装版と通常版と、備中和紙版というのがあります。
通常版は表紙のみ和紙で製本。特装版は本文も和紙になっています。この本文に使っている和紙、じつは私が手漉きで漉いたもので(小川町和紙体験学習センターで漉きました)、これを機会に数量限定の本にしました。
備中和紙版は、本文用紙に岡山の備中和紙を使っています。薄暗い墨色の和紙で、この短編集の雰囲気に近いのではないかなと思います。コストが大幅にかかってしまって、2冊しか作っていません。
挿絵と表紙は木版で制作しました。文字組みは、活版期の印刷のような雰囲気を目指しています。アナログの技術と、パソコンをうまく使い分けたいなという実験でもありました。