蜜柑みかん
うつうつ降り続く雨の中で、早苗は近所の子どもたちにはやし立てられたことを思いだす。考えもしていなかった花田とのこと。話の合う友だち、気の合う友だち……それが。
「おねえちゃん、デートしてる!」
薄暗い部屋の中にいると、ますます頭だけが冴えてきて、思いが巡る。よく会うしりあい。ただのしりあい……そのはずなのに。
いかるが
ときどき、「これは傑作だ」と思える夢をみることがあります。まあ、それは、夢の中だから生まれた発想ですし、目が覚めたころにはすぐに忘れてしまうものです。忘れてしまうのですから、本当に傑作な夢を見ていたのかなんていうのも怪しいものなんですよね。
この話は夢で見た光景をもとに書いたものです。物語とおなじように雨がぼそぼそ降っている日の朝でした。ゆめうつつのまま、机からペンをとりだし、なんとかメモに書き留めることに成功、だけど、あとからそのメモを見返したら、結構ヒドいできでして(だからやっぱり夢で傑作を見たかは怪しくて)……あれこれ書き直しているうちに、夢で見た雰囲気とすいぶん変わってしまったように思います。けっして傑作とは云いませんが、わりあい知古文庫のなかでも評判のいい物語にはなりました。
知古
全般的にものを作るのが好きなで、オトコながら裁縫に抵抗がありません。マイミシンも持っています。義務教育で使いかた習ったし。ジェンダー教育の成功例と思います。
少ないページのものであれば、髪を束ねて、真ん中をミシンで縫うだけで本になります。「ミシン綴じ」といって最近よく見かけるのものです。手頃ですし、糸の色を選ぶだけだけでもたのしいし、あたたかみもあって、冊子を造るかたにオススメの綴じかたです。